小規模宅地等の特例を適用する際の注意点

相続や遺贈によって取得した財産のうち、その相続開始の直前において被相続人(お亡くなりになった方)または被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族の事業の用または居住の用に供されていた宅地等(土地または土地の上に存する権利)のうち一定のものがある場合には、その宅地等のうち一定の面積までの部分については、相続税の課税価格に算入すべき価額の計算上、50%または80%を減額することができます。一般的に小規模宅地等の特例といわれています。

この特例を適用する際の注意点について説明したいと思います。

小規模宅地等の特例は相続税の申告期限までに遺産分割が行われていることが適用の要件となっています。

相続税の申告期限までに遺産分割協議がまとまらない場合には、相続税の申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付し提出しておけば、相続税の申告期限から3年以内に分割された場合に特例の適用を受けることが可能となり、分割が行われた日の翌日から4か月以内に更正の請求をすることとなります。

相続税の申告期限の翌日から3年を経過する日において分割されなかったことにつき一定のやむを得ない事情がある場合には、申告期限後3年を経過する日の翌日から2か月を経過する日までに、「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」を提出し、承認を受けた場合には、判決の確定日等の翌日から4か月以内に分割されたときに、特例の適用を受けることが可能となります。この場合も分割が行われた日の翌日から4か月以内までに更生の請求を行うこととなります。

 

この特例では、被相続人の居住の用に供されていた宅地等について他の要件を満たせば適用対象となりますが、被相続人(お亡くなりになった方)が病気のため入院し、退院することなく亡くなった場合、被相続人が入院前まで居住していた建物の敷地は小規模宅地等の特例における「被相続人の居住の用に供されていた宅地等」に該当するのでしょうか?

入院していたので、その建物には居住していないため、小規模宅地等の特例の対象外となってしまうのでしょうか?

病院に入院した場合、被相続人が入院前に居住していた建物が入院後に他の用途に供されていたような特段の事情がない限り、被相続人の生活の拠点は入院前に居住していた建物に置かれているものと解して差し支えないこととされています。

したがって、入院して空き家になっていた場合でも、その建物の敷地は「被相続人の居住の用に供されていた宅地等」に該当し、他の要件を満たせば小規模宅地等の特例の対象となります。

 

被相続人から相続人が生前に財産の贈与を受けた年と被相続人が亡くなった年が同じ場合、その年に生前に贈与された財産については贈与税の申告対象ではなく相続税の課税価格に加算して相続税を計算することになります。

この相続税の課税価格に加算された財産が土地だった場合、土地の利用状況、取得者等の要件を満たせば小規模宅地等の特例は適用できるのでしょうか。

小規模宅地等の特例は、個人が相続又は遺贈によって取得した財産のみが適用対象とされています。したがって、生前贈与された土地については、小規模宅地等の特例は適用できないこととなります。

 

相続税は個人が納税義務者になることが一般的ですが、被相続人から遺贈により人格なき社団が財産を取得した場合、人格なき社団が個人とみなされて相続税の申告・納税義務が生じます。

この場合、遺贈された財産が土地で小規模宅地等の特例の適用の条件を満たすような土地であった場合、小規模宅地等の特例は適用できるのでしょうか。

小規模宅地等の特例の適用者は個人に限られていますので、人格なき社団が相続税の申告・納税義務が生じる場合であっても小規模宅地等の特例は適用することができません。