相続税の障害者控除と未成年者控除

相続税には、障害者控除という税額控除の制度があります。

相続又は遺贈により財産を取得した者(法定相続人のみ)が障害者である場合、一定額を相続税額から控除できる制度なのですが、控除額は以下のとおりです。

一般障害者の場合
(85歳-相続開始時の年齢)×10万円

特別障害者の場合
(85歳-相続開始時の年齢)×20万円

この障害者控除の額が障害者ご本人の相続税額を超える場合、控除で差し引いた余りの金額(控除不足額)をその障害者の扶養義務者の相続税額から控除できることとなっています。

この扶養義務者とは、配偶者並びに民法877条の規定による直系血族及び兄弟姉妹並びに家庭裁判所の審判を受けて扶養義務者となった三親等内の親族をいいますが、三親等内の親族で生計を一にする者については、家庭裁判所の審判が無い場合であっても扶養義務者に該当するものとして取り扱われます(相続税法基本通達1の2-1)。

対象となる「障害者(特別障害者)」についてはその範囲が相続税法施行令第4条の4に定められていますが、いわゆる障害者手帳をもっていない方でも該当する場合があります。

例えば、要介護認定を受けている65歳以上の方で市区町村長から障害者(特別障害者)に準ずるものとして認定を受けている方は、相続税において障害者控除の適用対象となります。

相続税の申告にあたっては、相続財産がどのようなものか把握することは当然ですが、相続人の方の状況も漏れなく把握する必要があります。

過去に障害者控除の適用を受けた方が2回目に障害者控除の適用を受けようとする場合は、前回の相続税申告における控除不足額を限度として控除額を計算することとなります。

具体的には、以下ののいずれか少ない金額が控除可能額となります。

(85歳-今回相続開始時の年齢)×10万円(特別障害者の場合は20万円)

②①の金額+前回相続開始の時から今回相続開始の時までの年数×10万円(または20万円)-前回相続税申告時にその者及びその者の扶養義務者の相続税額から控除した金額

 

相続税の税額控除の制度として障害者控除と同様に未成年者控除という制度があります。相続又は遺贈により財産を取得した者のうちに未成年者(法定相続人のみ)がいる場合、その未成年者の納付すべき税額から一定額が控除できる制度です。

控除できる額は、(20歳(令和4年4月1日以後は18歳)-相続開始時の年齢)×10万円となっています。

令和4年4月1日以後に相続又は遺贈により財産を取得する者については、適用が満18歳未満の者となり、18歳になるまでの年数に10万円を掛けて計算することとなります。

この控除額が未成年者の相続税額(相続税額の2割加算後、贈与税額控除、配偶者の税額軽減額を控除した後の金額)より多いため、控除しきれない場合は、控除しきれない額をその未成年者の扶養義務者の相続税額から控除することができます。

この場合、未成年者がそもそも財産を取得していないために相続税額がゼロである場合には未成年者控除の規定の適用がなく、扶養義務者の相続税額からも控除できないこととなっています(相続税法基本通達19の3-4)。財産を取得して一旦相続税額が算出された後に贈与税額控除額又は配偶者の税額軽減額を控除して相続税額がゼロとなった場合は、扶養義務者の相続税額から控除できることとなります。

未成年者控除をその本人と扶養義務者に適用する場合は、未成年者が相続財産を取得する必要があるということに注意が必要です。