遺産総額から差し引くことができる債務関係で判断を誤りやすいもの

相続税を計算する際、お亡くなりになった方(被相続人)の借入金等の債務(被相続人が死亡したときにあった債務で確実と認められるもの)は、遺産総額から差し引くことができます。

ご存命であれば、お亡くなりになった方が支払うべきものですので、プラスの財産から差し引いて相続税を計算するのは、相続税の仕組みから考えて当然とも言えます。

遺産総額から差し引くことができる債務について、該当するかどうかの判断を誤りやすいものについて以下でご説明したいと思います。

 

団体信用生命保険がセットになっている住宅ローンをお亡くなりになった方が借りていて、お亡くなりになった時点では住宅ローンが存在していたが、死亡後に生命保険契約により残債の返済が全額免除された場合、相続税の計算はどのようになるのでしょうか?

団体信用生命保険契約により返済が免除される住宅ローンは、相続人が支払う必要のない債務ですので、相続税の計算上、債務として計上することはできません。

住宅ローンとセットになっている団体信用生命保険契約ではない通常の生命保険金(被相続人が保険料を支払っていたもの)は非課税枠があるみなし相続財産となりますが、団体信用保険生命保険契約の場合は、住宅ローンと相殺されるのみで保険金を遺族が受け取るわけではないので、みなし相続財産にもならず、債務控除も計上できない、いわばプラスマイナスゼロとして相続税の計算に影響しないものとなります。

 

被相続人の死亡後に、被相続人が居住していた自治体から被相続人の住民税と固定資産税の納税通知書が届いた場合、相続税はどのような計算になるのでしょうか。

住民税と固定資産税の納税義務は死亡した年の1月1日時点で成立しているため、被相続人の死亡時点で納税通知書が届いていない場合でも、固定資産税と住民税は相続財産の価額から差し引くことができる債務として計算することができます。

 

被相続人(お亡くなりになった方)が個人で事業をされていた場合や不動産の貸付を行っていた場合、1月1日からお亡くなりになった日までの所得について所得税の確定申告が必要となります。

この申告は相続の開始があったことを知った日(通常は死亡日)の翌日から4か月以内に相続人が行わなければならないのですが、税額が発生した場合、この所得税は相続税ではどのように取り扱われるのでしょうか?

準確定申告で納付すべき税額が発生した場合、その税額は遺産総額から差し引いて相続税を計算することができます。一方、準確定申告により還付となる税額が発生した場合、その税額は遺産総額に含めて相続税を計算しなければなりません。