相続税の申告期限までに遺産が未分割の場合の注意点
相続税の申告期限は相続が開始したことを知った日(通常は被相続人がお亡くなりになった日)の翌日から10か月以内となっています。
相続人の間で相続財産に争いがあり、相続税の申告期限までに遺産分割協議がまとまらない場合は、相続税の申告はどうなるのでしょうか?
相続税の申告は、相続財産が分割されていない(遺産分割協議が終わっていない)場合であっても、10か月以内に行う必要があります。分割されていないということで、相続税の申告期限が延長することはありません。
相続財産の分割協議が終わっていない場合は、民法に規定する法定相続分に従って財産を取得したものとして相続税の計算をし、申告期限までに申告と納税を行う必要があります。
債務や葬式費用についても各相続人の負担額が確定していない場合は、民法第900条から第902条までの規定による相続分又は包括遺贈の割合に応じて負担したものとして計算することになります。
小規模宅地等の課税価格の特例や配偶者控除の税額軽減の特例は相続税の申告期限までに遺産分割が行われていることが適用の要件となっています。
相続税の申告期限までに遺産分割協議がまとまらない場合には、相続税の申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付し提出しておけば、相続税の申告期限から3年以内に分割された場合に特例の適用を受けることが可能となり、分割が行われた日の翌日から4か月以内に更正の請求をすることとなります。
相続税の申告期限の翌日から3年を経過する日において分割されなかったことにつき一定のやむを得ない事情がある場合には、申告期限後3年を経過する日の翌日から2か月を経過する日までに、「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」を提出し、承認を受けた場合には、判決の確定日等の翌日から4か月以内に分割されたときに、特例の適用を受けることが可能となります。この場合も分割が行われた日の翌日から4か月以内までに更生の請求を行うこととなります。
相続税の納税について、金銭で納付することが困難な場合に一定の条件を満たすことを条件に、金銭で納付する代わりに相続財産により納付することができる物納という制度があります。遺産が未分割の場合、物納の制度は利用できるのでしょうか。
物納を行う場合には、物納申請書を相続税の納期限までに提出する必要がありますが、納期限に相続財産の分割協議が未了である場合は、物納財産として管理処分不適格な財産に該当することとなり、物納が認められません。
相続税の物納を検討されている方は、遺産分割協議のスケジュールも含めて検討が必要です。